March,9,2004
「ところで拳児君」
「何だイトコ」
「最近うちのクラスの塚本八雲君と仲が良いそうだね」
「あ、あぁ…」
「彼女確かキミのクラスの塚本天満君の妹だったはずだよな」
「そうだ」
「…妹に乗り換えたのか?」
「ふざけるなイトコ!俺は天満ちゃん一筋だ!!妹さんにはいろいろ相談に乗ってもらってるだけだ」
「冗談だよ拳児君。キミがそういう男なのは私も一応理解してるつもりだ」
「ったく」
「…で相談とはつまり、『天満ちゃん』のことかね?」
「なっ…」
「ターゲットの身内に協力者を得たのは大きなアドバンテージだ。目の付け所は悪くないぞ」
「おいおい、それじゃまるで俺が天満ちゃんと仲良くなるために妹さんを利用してるだけみたいじゃねーか。
妹さんに相談に乗ってもらってるのはもっと個人的なことだ。天満ちゃんとは関係ねぇ」
「ほぅ、それでは一体何を相談してるのか言ってみたまえ」
「う…そ、それは言えねぇ」
「つまり私にも言えないようなことを相談しているわけか…
となれば一度彼女を職員室にでも呼び出して問いたださねばならんな」
「お、おいちょっと待て。なんでそうなるんだ?」
「校内一の札付きの悪が内気な下級生の女子を屋上に呼び出して
人に言えない話をしてるんだぞ?担任として放置できる事態ではなかろう」
「くっ…わかったよ、妹さんに迷惑かけるわけにいかねぇ」
「妙な所で義理堅いなキミは…まぁいい、さあ正直に話したまえ」
「俺実は漫画描いててその相談に乗ってもらってたんだよ」
「……」
「やっぱ呆れてるのかイトコ…畜生、だから話したくなかったんだよ」
「…いや、隠してるつもりだとは思ってなかったんで驚いただけだ。
キミが漫画描いてることぐらい前から普通に知ってるぞ?」
「!!!」
「最初はただの現実逃避の妄想を描き殴ってる感じだったが最近はそれを作品として昇華しようとしてる努力は感じ…」
「しかも読んでやがったのかイトコてめぇ」
「まぁ待ちたまえ拳児君。あれだけの暴れん坊が急に部屋に篭って何かブツブツ言いながら
ひたすら机に向かって書きだしたら誰だって心配になるだろう?別に秘密にするつもりだとも思わなかったしな」
「ちっ…わかったよ」
「…それはそうと主人公の相談役の無口な女の子だが」
「ん?漫画の話か?ひょっとしてキャラ弱いか?いい娘さんだと思うんだがな…」
「いや、彼女は十分すぎるほど魅力的だ。一つ間違えばヒロインを食ってしまいかねんぐらいな」
「お?そうか?いや俺はそこまでとは思わなかったんだが」
「…むしろだからこそなんだが、彼女を入れて三角関係の話にするというのはどうかね?」
「???」
「つまり彼女が実は主人公のことが好きだという方向に持っていくのだよ」
「あーなるほど、思わぬライバル出現にヒロインは自分の主人公への想いに気付かされてって寸法か。
…でもそういう話にするとなると全然違うキャラにしないといけなくなるなぁ、この娘さん」
「そうかな?」
「いやそうだろコレは。今のこの娘さんの言動で実は主人公のことが好きなんて120%ありえねぇ」
「…相変わらず鈍感な男だな」
「ん?何か言ったかイトコ?」
「いや何も」
おしまい。