March,26,2004
「なあ花井」
「なんだ周防」
「その…なんつーかそんな落ち込むなよ、塚本の妹だけが女じゃねーんだしさ」
「……」
「…ま、先輩のことまだ完全に吹っ切れたわけじゃないあたしが言えた義理じゃないんだけどさ」
「周防…」
「……」
「…すまない」
「気にすんな、こういうときはお互い様だろ」
「そうか…しかし昔からいつもこうだな」
「だからそれもお互い様だって」
「…なあ周防、覚えてるか?」
「なんだ?」
「小学校のときの縦笛のテストのことだ」
「へっ?…ごめん何だっけそれ」
「僕がクラスで完全に無視されて学校に行かなくなった―――」
「え?あ、あぁ、うーん……あーあれか…あんま思い出したくないから忘れてたよ」
「思い出したくなかった…まあそうだな、あの時は恥ずかしい思いをさせてすまなかった」
「あーいや、そういうんじゃなくてさ」
「???」
「なんつーか、止められなかったのが悔しくてな」
「……」
「しかもアンタ学校来なくなっちまうし…今にして思えばずいぶん傲慢な話だけどさ、
あの頃はあたしが花井を守ってやんなきゃいけないんだって思い込んでたっていうか」
「まぁ実際そうだったからな…あの頃の僕はただ周防の後ろをくっついていくだけの弱虫だった」
「…でも今は違うじゃないか」
「いや、だからあの時決心したのだよ。すお…『ミコちゃん』みたいに強くなろう、
いつかミコちゃんが困っている時に今度は自分が助けてあげられる自分になろうとな」
「いまさら『ミコちゃん』はやめてくれよ、恥ずかしい…」
「だが未だにこうして何かあると周防に慰められてる僕がいる。
僕は本当に変われたのだろうか、こんな弱い僕だから八雲君も…」
「…あーもうストップストップ。だからそれはお互い様なんだからそれでいいじゃねえか。
少なくともあたしは花井は強くなったと思ってるし頼りにしてるよ」
「周防…」
「…なぁ、それじゃあダメか?」
「いや、ありがとう…」
「じゃあお互い頑張って早く立ち直ろうぜ。あたしも一人じゃ大変だけど
花井と一緒なら先輩のこと完全に吹っ切れそうな気がするし」
「???」
「…あ、いやいやいやそーいう意味じゃなくてだな…つまりお互い励ましあいながらその…」
「あぁ、そういうことか」
「……」
「……」
おしまい。